VR（仮想現実）という言葉を聞くと、ゲームや映画などをイメージする人が多いのではないでしょうか。実はVR技術はそのような一般ユーザー向けだけでなく、医療や介護、教育といった分野でも導入が進んでおり、従来よりも作業負担の軽減や業務の効率化、手術などの精度向上などに貢献しています。その実例と使用用途などについて解説します。
VR（仮想現実）とは
VR（バーチャルリアリティ）は、「仮想現実」という意味でゴーグルやシミュレータを利用して現実とは異なる仮想空間を創造し、ユーザーにまるで現実のような体験させる技術のことを指します。一般的にはCGを使って専用ゴーグル・ヘッドセットを装着することで、3D空間の映像や音響などを楽しむために利用されるケースが多いです。
VR技術が活用される業界1：医療
診察・手術などの医療行為とVR技術は相性が良いとされており、特に導入が進んでいる分野の1つです。例えば、外科手術で用いる2Dの平面モニターでは空間認識が困難で、内視鏡手術などにおいては臓器の奥行きなどを把握できないまま、医者個人の技術や経験をもとに実施しており、臓器損傷のリスクが増大するなどの課題が挙げられています。VR技術を用いれば、臓器の形状をでた3Dデータで書き起こせるため、より正確で直感的に捉えられると期待されています。また、同技術は歩行訓練や手術のトレーニングや事前のシミュレーションに活用されています。
VR技術が活用される業界2：教育
半導体の中にはさまざまな回路が使用されています。回路設計は、使用する回路の中身や、回路の配置パターンなどを決める作業です。一般的には半導体の機能そのものを決める「システム設計」をそのために必要な電子回路を決定する「ロジック設計」の次に、回路設計を作成されます。
また、より具体的なパーツの配置して詳細な回路を検討することから「パターン設計」と呼ばれることもあります。
回路の配置により動作の効率を左右することもあり、これから製造する半導体の全体像を決定する作業であるため、重要度の高い作業です。
社会科・校外学習での活用事例
工場見学や美術鑑賞などの校外学習は、実際に現地に赴くことが前提の授業です。ただ、予算や日程が限られることから年間で実施できる回数は限られていました。VR技術を駆使すれば、教室にいながらそれらの施設を再現した映像を体験でき、より充実したカリキュラムを立てることが可能になります。また、深海や宇宙など本来は足を踏み入れられない場所もVR技術によってまるでそこにいるかのような体験を得られます。さらに英会話でも現実のような会話の相手がいることでより、効果的なコーチングが可能になると考えられています。このように学校教育においては、授業の幅がより広く、理解度が深まるような活用方法が期待されています。
試験・研修での活用事例
工場における安全管理などの研修はテキストで行われることが多く、事故のリスクを低減させるには改善点があると考えられてきました。VR技術を利用することで、事故を現実さながらに体験でき、安全意識の向上にもつながると考えられています。また、重機の運転や船舶、飛行機などの特殊な車両の研修などにも導入されています。
VR技術が活用される業界3：介護
介護業界では、介護する人（介護者）とされる人（被介護者）の両者に対してVRが有効であると期待されています。介護される方に対しては、レクリエーションの1つとしてVRを利用されることがあります。例えば、仮想現実によって被介護者の過去の写真や思い出の品を再現し、それを語らうことで心の健康につなげられます。このような心理療法において、VR技術が役立つと考えられているのです。
一方、介護者においては新人のトレーニングに活用されることが多いです。介護の仕事の一連の流れのほか、ベテランスタッフによるVRを用いた指導、さらに被介護者の立場を体験させることでより丁寧で迅速な技術習得を図れます。また、自主学習としても活用されるほか、視覚で学べるので規制緩和で増えると考えられる外国人の介護スタッフの教育にも有用と期待されています。
今後、さらに導入が進むVR（仮想現実）
生活に欠かせない分野である医療・教育・介護におけるVR技術の活用事例と期待されている用途について解説しました。5Gの普及や技術発展によって、今後さらに導入事例が増え、活用シーンの幅も広がると考えられています。この潮流は今回、紹介した3分野以外も同様です。今後はビジネスに必須の知識となる可能性が高いVR技術について、今からアンテナを張って情報収集することをおすすめします。